親権を重視、子どもの声は無視?!里親委託が進まない理由(2)


前回の記事でもご紹介した通り、我が国では社会的養護が必要な子どもたちに対して、
施設措置による対応が一般的になっており、里親など家庭養護が著しく遅れています。

社会的養護が必要になった乳児・児童・生徒たちは、
まず第一義的に家庭的養護を受ける権利があり、これは日本も批准している
「児童の権利に関する条約」第20条に明確に規定されています。

里親ではなく、施設への措置が許されるのはあくまで
「必要な場合(if necessary)」のみで、原則はすべてに家庭環境を与えなければなりません。

ここに立ちはだかる最大の要因が、「実親の不同意」です。
日本では一時的な養育を担当する「里親」と、血縁関係を持つ「養子縁組」の
違いすら認識されていないこともあって、里親に対する実親の抵抗が非常に強いのです。

「里親に、わが子を取られてしまう」
「施設ならいいけど、里親なんてもってのほか!」

行政としてはこうした実親とのトラブルは避けたいところですし、
実親から裁判でも起こされてはたまらないというわけですね。

また、里親への対応にも課題があります。
施設から里親に措置変更をして、うまくいくとはもちろん限りません。

「成長してから、障害を持っていることが発覚したら大変だ」
「もし問題行動を起こす子で、里親さんに負担をかけるのは申し訳ない」

アマチュアである里親さんに任せるより、プロの施設に置いておく方が安心安全。
里親措置をした結果、問題が発生して里親側から裁判でも起こされてはたまらない…。

そんな行政側の心理が、消極的な里親措置の数字からも見て取れます。

高齢者福祉に比べて極めて少ない予算や人員でやりくりしている、
行政担当者や児童相談所の対応には理解と敬意を表したいと思いますが、
率直に言って「一体どっちの方向を向いているんだ!!」と感じます。

社会的養護の受益者は、当然ながら子どもたちです。
養育能力のなくなってしまった実親や、子どもが欲しい里親ではありません。

それでも子どもたちの国際的権利や環境を無視して施設措置が選択されるのは、
子どもたちは声を上げることができず、権利を主張することもできないからです。
リスクや負担をすべて、声なき子どもたちに押しつけているのです。

そもそも冷徹に法的な観点から言えば、虐待の発生や疾患、
経済的理由などで養育能力をなくした実親は、社会的養護措置に同意した時点で

「施設ならいいけど、里親委託はイヤ!」

という選択をする権利はありません。
実際に、児童養護施設と実親が交わす同意書にそんな項目はないそうですが、
意思確認という「運用」の中でなぜか実親の意向が強く反映されています。

東京都では4,000人、国全体で4万人を超える乳児・児童・生徒が社会的養護の対象となる一方、
里親に登録しながら未委託となっている「休眠里親」が数百組以上存在します。

子どもたちの絶対量に対しては充分な里親世帯があるわけではないですが、
なぜか「余っている」という状態が作りだされているのです。

上手くいかないことはあるでしょう。
「里親」というイメージが日本社会にもっと浸透するまでは、
失敗を社会やマスコミから叩かれることもあるかもしれません。

しかし、第一義的に子どものことを考えるという信念のもと、
「運用」さえ改善されれば、休眠里親の元に行ける子どもたちは沢山います。
日本や東京都は今すぐ、法律や国際基準に反した運用を改めるべきです。

「すぐに迎えに来るから、施設の方がいい」
「他人の家庭に入れて、その色に染められてしまうなんて嫌だ!」

そう考える実親の気持ちがどんなに無視しがたくても、
虐待・精神疾患・経済的理由などで多くの場合、実親の元に戻ることは困難です。

そうこうしているうちに子どもが大きくなり、
深刻な愛着障害症から問題行動を起こすようになってからでは遅いのです。

「どんな子でも希望があり、輝かせるものをいっぱい持っている。それを大人がつぶしてはいけない。輝かせることができるかできないかは、大人の責任

我々はこの視点とメッセージを、忘れてはいけないと思います。